★ バック・トゥ・ザ・ハロウィン! ★
<オープニング>

 もう気がつけば12月。
 クリスマスなどのイベントが続き、師走といわなくとも忙しい人間は多い。
 Cafeスキャンダルも常木利奈も、そうだった……。去年までは。
「はぁ……」
 今年の利奈は元気がない。
 理由をとりあえず尋ねてみる。
「いやね、変なムービースターにあっちゃってね……。笑わないで聞いてくれる?」
 そうとう嫌な思い出なのか、こっそりといった具合で利奈が顔を寄せて話かけてきた。
「こんな季節にジャック・オー・ランタンの被り物して、カボチャ色のブーメランパンツしかきていなくてね……」
 想像してみる。
 非常に怖い。
「さらに、そいつのロケーションエリアなのか音楽が流れ出して一緒に踊りだしちゃったわけ、この年で体操服にカボチャパンツを着せられるとは思わなかったわ」
 利奈のその格好を想像してみる。
「ちょっと、何鼻の下を伸ばしているのよ」
 ジト目でみられ、あわてて顔をそらした。
「そんなのが銀幕広場にたまにでるようだから、気をつけてね……いや、いっそ倒してほしいものだわ。私にあんな恥ずかしい格好をさせたんだから」
 ぐっと拳をにぎり、利奈は怒りに燃えていた。
 あんな恥ずかしい格好を胸に、どうしようか今一度考えてみることにする。

種別名シナリオ 管理番号323
クリエイター橘真斗(wzad3355)
クリエイターコメントどうも、橘真斗です。
シリアスなシナリオがだせません(何)
イロモノを連続というのもアレですが、出します。
元ネタについては、ご想像にお任せします。

ちなみに、女性はカボチャパンツに半そで体操服。男はカボチャ色のブーメランパンツで踊らされます。
ムービースターの名前は「ジャック・オー・ハッピー」で、悪戯よりも皆を楽しませるために生まれてきた人物です。
害はないのですが、出てくる時期が悪かったと……。
目的は、彼の説得および退治です。

そんなのかんけいねぇ! と一緒に踊りたい人はそれはそれでOKです。

参加者
長谷川 コジロー(cvbe5936) ムービーファン 男 18歳 高校生
新倉 アオイ(crux5721) ムービーファン 女 16歳 学生
レイド(cafu8089) ムービースター 男 35歳 悪魔
ルシファ(cuhh9000) ムービースター 女 16歳 天使
ティモネ(chzv2725) ムービーファン 女 20歳 薬局の店長
コーター・ソールレット(cmtr4170) ムービースター 男 36歳 西洋甲冑with日本刀
<ノベル>

〜興味本位はスイマーを踊らす?〜

「奇妙な噂が流れているようッスねぇ」
 長谷川 コジローは部活の帰り、家に向かわず銀幕広場に足を向けていた。
 噂を聞いたのは、綺羅星学園にあるファンクラブの女生徒が被害にあったからである。
『私、コジロー先輩の彼女になりたかったのにっ、アンナ格好で踊らされたなんて。お嫁にもいけないっ!』
 両手で顔を押さえて泣く少女の姿はコジローの脳裏に深く刻まれていた。
 茶髪でロン毛で、スポーツマンなコジローは綺羅星学園内外でファンは多い。
 水泳雑誌にも、写真を掲載されたこともある。
 後輩の台詞もあながち嘘ではないだろう……。
「でも、なんではずかしがるんッスかねぇ、蝶々さま」
 虚空をボーっと見つめながら、話かけるコジロー。

『皆、はずかしがってるだけよン。ほら、メタボリックとか気にしてるじゃない?』

「なるほど、さすが蝶々さまッスねぇ」
 他の人間には聞こえない声に対して答え姿は不気味であった。
 この妄想モードに突入すると、道が歩きやすかったり割と得なので、コジローはいたって気にしていない。
 そんな具合で、妄想の守護神『蝶々さま』との世間話をまじえた楽しいひと時を過ごしていると、銀幕広場に着いた。
 夕方の銀幕広場は奇妙な噂のためか、めっきり人が減っていた。
「にぎやかさがないッスねぇ、後輩達ときたときはもっとにぎやかだったッスけど」
 大会終了後に打ち上げできた時のことを思い出す。

『あのときも楽しかったわねン』

「そうっスよ、楽しんで何ぼ。無理やりはダメッス」
 ぐっと気合をいれるコジロー。
 そうしていると、奇妙な音楽が流れはじめる。
 そして、カボチャ男―ジャック・オー・ハッピー―は現れた。
「ハロウィンに! 出遅れた! けどそんなの関係ねぇっ!」
 カボチャ頭にブーメランパンツをつけたその怪人は、左手で地面を叩きつける動作をしながら、片足をその場で後ろに蹴り上げる踊りをする。

『ロケーションエリア、来るわよぉン』
 
 ロケーションエリアを被った、蝶々さまはなぜかカボチャ色のビキニの格好をしていた。
「蝶々さま、何でそんな格好を……」

『オトメの秘密、けどそんなの関係ないわン』

 蝶々さまは返事をしながら、ノリノリで踊っていた。


〜連鎖は続くよどこまでも〜


 コジロー(と蝶々さま)カボチャ水着で踊り続けていると、新倉アオイが対策課から借りた『コスチュームB』を持ってでやってきた。
 その手には『コスチュームB』。アズマ研究所で自分が研究に参加したため生まれたため思い入れは多少ある。
「バトルスーツもあれだったけど……この着ぐるみもなしだよねぇ、朝のお子様番組のアレならともかく」
 などと呟いていると、銀幕広場から謎のダンスミュージックガ聞こえてきた。
「急いで怪人しばき倒さないと……」
 そして、足を踏み込む。
 奇妙な感覚。
 ゼリーの壁に手を入れるような、生ぬるい感じ。
 それは、ロケーションエリアに『はいったときの感覚の一つ』であることにアオイは気づいた。
「やばいっ、ってぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 年頃の乙女とは程遠い悲鳴が銀幕広場に広がった。
 アオイの格好は半そで体操服にカボチャパンツ。
 ご丁寧にゼッケンには『1ねん3くみ あおい』と書かれていた。
「な、何なのこれ! はずかしいからやめてぇぇぇ! けど、そんなの関係ないっ!」
 そして、抵抗をしだすもすでにロケーションエリアの影響を受けているのか、語尾に妙な言葉がついた。
 体操服のすそを伸ばしてカボチャパンツを隠そうとするも、片手と片足はリズムをとって動き出している。
「アオイさんも踊りにきたんッスね!」
「コジロー先輩……って、こっちを見るな! 近づくなぁぁぁっ! けど、そんなの関係ないっ!」
 さわやかな笑顔を向け、コジローは華麗なステップと共にアオイに近づいてくる。
 その引き締まった体にちょっとぽやっとなるが、そんなこと今は関係ない。
 今の格好を学園生に見られていることが、アオイにとって一番問題なのだから……。
「あ、アオちゃんだー」
 説得で疲れたレイドをずりずりと引きずりながら、次なる犠牲者……いな、参加者のルシファがやってきた。
「あ、レイドのおじさん……」
 なぜか、アオイはるシファに声をかけられず、レイドにだけ挨拶をかえした。
「なぁ、アオイ嬢ちゃん……いつからそういう趣味に」
 レイドの返事は残酷だった。
「趣味じゃないやいっ、おじさんの馬鹿っ! けど、そんなの関係ないっ!」
「あるのか、ないのかどっちだおい」
 などといいつつ近寄っていく二人。
 そして、案の定エリア内に入ってしまうわけで……。
「わーい、アオイちゃんとおそろいだー!」
 ルシファは半袖体操服でカボチャパンツの格好にはしゃぐ。ゼッケンも『1ねん3くみ るしふぁ』とあるところも彼女としては嬉しかったのだろう。
「畜生、嫌な予感がしていたんだよな……だが、ジャケットがねぇ! けど、そんなの関係ねぇ! んなわけあるかっ! でも、関係ねぇ!」
 苦虫を噛み潰したような顔で自らのブーメラン一丁姿を悔やんだ。
 用意していた荷物も消されていて、なおかつ否定口調の多いレイドは一人漫才を繰り返すという屈辱を受けていた。
「ウェェェエイ、今日はお客さんが一杯だ、ハロウィンナイトフィーバー!」
 腰に手を当て、片手を天に突き上げるポーズをとると、曲がかわる。
 そして、あえて狭くしていたロケーションエリアの範囲が広がった。
 

〜貴殿と合体したい〜


「何、あのカボチャ男……最近、変質者が増えているわね」
 買い物帰りに広場の前を遠くから通りすぎようとしていたティモネ。
「今の銀幕市はモラルが低下しているのかしらね。ティモネさんちょっと悲しいわ」
 だが、運がいいのか悪いのかカボチャ男から半径500m以内に彼女はいた。
 背を向けて去ろうとした彼女に周囲の視線が刺さる。
(良くあることね、美しさは時には罪……いや、いつもと何か違う)
 視線の中にどこかねっとりしたものを感じてふと自分をみてみる。
 はちきれんばかりの肢体は半そで体操服と、カボチャパンツで覆われていた。
 ゼッケンは『3ねん6くみ てぃもね』と書かれている。
 そして、それを確認するやいなや、聞こえてくるBGMにあわせて体が動きだす。
「……やってくれたわね……? そのカボチャ頭、斬り落としてあげるわ! 鎌がないけど、そんなの関係ないわ」
 いつもの鎌も消失しており、悔やむもカボチャ男―ジャック・オー・ハッピー―を踊りながら追いかける。
 その姿はモンローウォークそのもので、周りの視線はグッと増えた。
 そして、ハーメルンの笛吹きよろしく、後ろに踊るカボチャ色ブーメラン男の列が生まれるという悪夢が生まれだす。
「ティモネさんも来たッスか、みんな実は好きなんッスね」

『だから、いったじゃないのン。はずかしがっているだけってねン』

「さすがっすね、蝶々さま」
 蝶々さまと謎の会話をしているコジローにアオイはじとーっとした目を向ける。
「コジロー先輩って、超ヤバイ人だったんだー けど、そんなの関係ないっ!」
 十分関係あると、心の中でアオイは突っ込みを入れた。
 そして、混乱はまだ続く。
「ほほぅ、今宵はスーパー無礼講と言うわけだな。拙者も混ぜていただきたい!」
 日本刀を持った西洋甲冑、コーター・ソールレットが博物館の警備帰りにやってきていた。
 喜んで混ざるコーター。
 ブーメランパンツが甲冑の上から装備され、何ともいえないものに仕上がっていた。
 子供の悪戯にしても酷い。
 しかし、それを面白がってくる子供、そして美形なコジローとレイドに女性らが引き込まれる。
 いまや銀幕広場はブーメランパンツの男達と体操服カボチャパンツの女に占拠される形になった。
 一言で言えば、カオス。
 二言でいえば、イロモノとキワモノ。
「貴殿と合体したいっ! その格好がスーパー恥ずかしいなら、拙者をきればズバット解決でござるよ!」
 そんな開放的(?)な空気がそうさせたかわからないが、コーターはいきなりそんなことを言い出し、アオイに合体を迫ってきた。
 音楽にあわせて阿波踊りを踊る西洋甲冑(ブーメランパンツ付き)が迫ってくる姿は学校の怪談の動く人体模型の数倍怖い。
「貴方がトゥキダカラー!」
 いきなり分裂してアオイに飛び掛るコーター。
「そんなこといわれても困るっ! ぎゃー、はーなーれーろー」
 手で押し返そうとすれば裾がめくれあがってカボチャパンツがさらされ、そうしなければ甲冑を着ることになる。
 そんなジレンマを抱えていると、アオイのバッキーがコーターをカジカジしだす。
「そ、それはスーパー卑怯なりっ」
 さすがに食われてはならないと、離れるコーター。
「と、とりあえず、こんなのやめよう! ハロウィンやりたいなら仕切りなおそうよ〜」
 アオイはカボチャ頭に向かって、悲痛に訴えた。
「そうッスよ、無理やりはダメッス。格好も自由で! ブーメランがみたいなら、俺や綺羅星学園水泳部が全面バックアップするッス!」
 キランと歯を輝かし、親指を立てるコジロー。
 その姿にくらぁとなる女性達は多い。
 丁度そのとき、音楽がとまり、ロケーションエリアが終わりを告げる。
「ウィィ? そんなにボクを必要としてくれてるのかい?」
 噂では逃げていた怪人は普通に会話をしだした。
「必要必要〜、ルシファもっとパーティしたい〜! アオちゃんもそうでしょ? ね?」
「え……あ、うん」
 喜ぶルシファとは対象的に顔が曇るアオイ。
(何かアオイ嬢ちゃんはあるようだが、俺がいうことじゃねぇか……)
 いつもの格好に戻り、ぶっ飛ばそうと思っていたがアオイの態度に毒を抜かれたレイドはそう思っていた。
「よくもティモネさんに、あんな格好させたわね?……ただで済むと思って?」
 しかし、ティモネのほうは毒気を抜かれることはなく、むしろ殺意全開だった。
「可哀想だよ〜」
 ティモネに対してルシファがカボチャ頭の前にたって、両手を広げた。
「そんなの関係ないわ」
 愛用の鎌を取り出し、ルシファに詰め寄るティモネ。
「おい、あんた。ルシファを傷つけるようなら俺が許さんぞ……」
 レイドの割って入り、緊迫した空気が流れる。
「それじゃあ、ちゃんとした格好で皆、踊るッスよ。それならティモネさんもいいッスよね?」
 それを普通の言葉でさえぎったのはコジローだった。
「ダンスする阿呆にルックする阿呆、同じ阿呆なら、シャルウィーダンスでござるな」
 内容は意味不明だが、コジローに同意を示したのはコーターだった。
「そういうことで、パーティしよう、パーティ!」
 アオイは片手を振り上げてパーティの開始を宣言した。
 
 
〜ハロウィンパーティ再び〜
 
 
 簡易ハロウィンパーティは市役所内の会議室の一つを借りて行われることとなった。
 コジローのファンクラブや水泳部が設営に協力してくれたおかげで、夜7時には準備が整う。
「うわぁ、すごーい!」
 ルシファが純粋に変貌を遂げた会議室に驚きの声を上げた。
 格好はアオイとおそろいのカボチャカラーの魔女衣装。
 ただし、カボチャパンツがいたく気に入ったのか、スカートの変わりにソレをはいていた。
「へぇ、やるじゃない。人手がいれば結構できるのね」
 ティモネも折角だからとサキュバスの格好で参加している。
「水泳部のみんなは冬場はランニングばかりで退屈してるんスよ。こういうイベントは多くてもいいじゃないッスか」
「そうね」
 ティモネはふふと笑う。
 機嫌は幾分直ったようである。
「これもいいものでござるな」
 コーターは存在そのものがそちら系のため、仮装はしていない。
「つーか、俺は何でこんな姿に……」
 一方レイドは犬の着ぐるみ(by首のところから顔がでるやつ)だった。
 犬は犬でもデフォルメされた犬であり、レイドが嘆くのも無理はない。
「それじゃあ、ミュージックスタート!」
 準備ができたところで、ジャック・オー・ハッピーが宣言し、CDプレイヤーから音楽が流れ出す。
 小さなダンスパーティが開かれた。
「とりっく おあ とりぃぃぃとっ! とりっく おあ とりぃぃとっ!」
 ジャックの表情は変わらないが、どこか楽しそうな雰囲気が見ていて伝わってきた。
「ハロウィンは一月前!」
 踊っている最中にジャックがそこで、台詞をとめた。
 そして、一緒にパーティを楽しんでいる皆は答える。
「「けど、そんなの関係ねぇ!」」
 楽しければそれでいい。
 心からそう思っていた。
 
 
〜別れの時〜
 
 
 1時間だけのささやかなダンスパーティは終わりを告げる。
「はわぁ、皆お疲れ〜」
 ルシファが汗をぬぐい万歳をしていた。
「はしゃぎすぎだっての……ほら」
 レイドがそっけなくジュースをルシファに渡した
「レイド、ありがとう♪」
 にぱぁと笑うルシファにレイドの心は満たされる。
 満たされていないのは、ティモネだった。
「さて、冥土の土産もできたことだからいいわよね?」
 鎌を抜き、カボチャ頭に近寄る。
「ウェイ、十分。今年はやりおさめることができた、ありがとう!」
 カボチャ頭が礼をいう。
「ちょ、ちょっとそんなこといわないでよ。ティモネさんが悪人みたいじゃない」
 さすがに戸惑うティモネ。
「それじゃあ、また来年。トリック オア トリート!」
 カボチャ頭の口が笑ったかのように見えると、カランとプレミアムフィルムが落ちる。
 ころころと転がり、ティモネの足にあたると床に倒れる。
「なんなのよ、かってすぎるじゃないの……」
 ティモネは何ともいえない気持ちを胸に抱え、ジャックのプレミアムフィルムを拾い上げた。

クリエイターコメント皆さん、お疲れ様でしたー。

ギリギリのギリギリで申し訳ないです(><)

参加者一同に感謝をいたします。
今年最後の納品となりますが、来年からもよろしくお願いします。

それでは、来年も運命の交錯するときまでごきげんよう♪
公開日時2007-12-22(土) 19:30
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